16ドルの古本が、作詞のロジックを丸ごと組み替えるきっかけになった。Camille BlackmanはThe FADERのインタビューで、Kurt Vonnegutの『スローターハウス5』を「100ドル以内で買った中で最高の買い物」だと語る——冗談めかした言い方だが、続けてもっと本音めいた一言をこぼした。「この本のおかげで、今の私はまったく違う作詞家になったと思う」。
Blackmanは近年Mom+Popと契約した新人アーティストで、現在デビューアルバムを制作中。リリースは2027年初頭を予定している。ワシントンD.C.出身の彼女のサウンドは「ベッドルーム・フォーク」と評され、ハスキーな歌声と型にはまらない比喩表現が特徴だ。最新シングル「kitchen」は別れをテーマにした一曲——「Said some awful things / but you have said them twice before」——感情の崩壊と割り切れなさの間で揺れる歌詞は、彼女自身が語る読書習慣、つまり分かりやすいパンチラインを求めず感情を回り道させる手法と、どこか通じるものがある。
彼女自身は「歌詞が誤解される」という考え方をあまり信じていない。Blackmanいわく、その瞬間に響いた言葉をそのまま書き留め、意味は後になって浮かび上がってくることも多いという。「リスナーが私の歌詞の中に自分なりの解釈を見つけてくれる、それ自体に力があると思う。それが私の本来の意図と違っていたとしても」。
彼女の審美眼の原点として挙げるのが、D.C.のナショナル・ギャラリー。幼い頃、母親に連れられて兄と共に印象派の絵画を見て回った記憶があり、Degas、Cassatt、Monetなどがそのラインナップに含まれていたという。音楽的な原体験については、初めて「自分自身の好み」で選んだアルバムがBeach Houseの『Bloom』だったと語る。それ以前は父親が聴いていた70年代ロックやMotown、ヨットロックばかりだったそうだ。このBeach Houseへの思い入れはライブ体験にもつながっていて、これまで観た中で最高のライブは、一人でD.C.のThe Anthemに足を運んで観たBeach Houseだったという。最前列まで進み、ほぼ泣き通しだったと振り返る。
理想とする成功のかたちを尋ねられると、Blackmanの答えは控えめだった。自分の音楽が、それを必要としている人の耳に届き続けてほしい、と語りつつ「最終的にHot Onesに出られたら、それはそれで悪くない」とも付け加えた。友人にスティック・アンド・ポークで彫ってもらった「wet paint」のタトゥーについても触れ、当時は特に意味はなかったが、今では「常に制作途中の作品である」ことを思い出させてくれるものだと捉えているという。こうしたエピソードから浮かび上がるのは、この新人アーティストの現在地——まだ書き続けていて、まだ物語がより大きな流れへとつながっていくのを待っている、そんな姿勢だ。
デビューアルバムの価格、正式なリリース日、収録曲の詳細については、現時点ではまだ公表されていない。