2万人の観客がO2アリーナを埋め尽くし、グランデの歌声もまた会場全体を満たしていった。NMEは特に、DJプロデューサーのゼッドとのコラボ曲『Break Free』で披露した超絶的な歌唱テクニックに触れ、あまりの完成度に歌詞中の文法ミス「Now that I've become who I really are」の違和感すら消えてしまったと評した。この公演は彼女の歌唱力を披露するショーケースと形容され、今や8枚のスタジオアルバムをリリースし、『Wicked』でアカデミー賞ノミネートも果たした彼女の実力を存分に示すものとなった。
だがこれは単なる歌声のショーではない。ステージビジュアルは、グランデが2025年に発表した短編映像『Brighter Days Ahead』から派生したもので、この短編は2024年発売の別れをテーマにしたコンセプトアルバム『Eternal Sunshine』の付随作品だ。公演の最後、グランデはシュールな光の柱に包まれてステージ上空へと上昇し、短編映像内のエイリアン誘拐シーンと呼応する演出を見せた。NMEはこの締めくくりを「感覚を揺さぶるもの」と表現している。
公演中盤では、グランデはプロデューサーとしての手腕も披露し、『Eternal Sunshine』では自身のボーカルをその場でループ録音していった。気だるげなアレンジの『The Boy Is Mine』では鞭を振るい、攻撃的な雰囲気の『Yes, And?』ではキレのあるダンスを見せた。NMEによれば、彼女は「大半のドラァグクイーンでさえ躊躇するほど」のハイヒールを履いたまま、ステージ上を自在に動き回っていたという。
2時間にわたるセットリストでは、2016年のダンスナンバー『Into You』や2019年のR&Bシングル『Thank U, Next』といった代表曲と、『Eternal Sunshine』、そしてわずか2週間前にリリースされたばかりの新作アルバム『Petal』からの、より雰囲気重視のディープカットが交互に織り込まれていった。NMEは、この組み合わせが真価を発揮するのは公演終盤だと評価している――『Petal』のタイトル曲が持つやや騒々しいアレンジから、感情の爆発を伴う『We Can't Be Friends (Wait For Your Love)』へと移行する流れは、実に自然だったという。