このシェフの名は Carlos Sotomayor。かつて High Yaki で腕を振るい、上海滞在は約10年に及ぶ。常連たちが「これはカルロスの料理だ」と一目で分かるような一皿一皿を作り上げてきた人物だ。そんな彼がついに手にした自分だけの舞台が VICE Shanghai。徐匯区永嘉路128号、かつての O'Mills のすぐ隣、同じく改装された古い洋館に新しくオープンしたレストラン兼ラウンジだ。バックにいるチームも一筋縄ではいかない顔ぶれで、Cantina Agave の Raffe「Wolf」Ibrahamian がプロジェクト全体を統括し、キッチンは Carlos が、バーは J. Boroski 出身の Nick が担当している。
Carlos の料理のベースはペルーの血筋と、中国をはじめアジア各地で培ってきた長年の経験。メニューは一見幅広い食材を扱っているようだが、味わってみると一貫した味覚のロジックが感じ取れる。看板メニューの一つ Mosaic(78元)は、大きめにカットしたサーモンをホタテを合わせたレモン風味のティグレレチェに浸し、クリーミーなアボカドペーストの上に盛り付け、セラーノペッパーでアクセントを効かせた一品。冷たくすっきりとした味わいで、酸味のバランスが絶妙だ。Tuna(98元)も同じ路線で、マグロをタルタル風に半生で仕上げ、グレープフルーツと柚子のビネグレットソースを添えている。シンプルながら爽やかな一皿だ。
Pepper Steak はサーロイン(268元/200g)またはフィレ(428元/300g)から選べ、フライドポテトが添えられる。ポイントは実はソースにあり、5種類の異なる胡椒を調合して作られていて、香りの層が幾重にも重なり、本来素朴な牛ステーキをぐっと引き立てている。何か癒し系のものが食べたければ Cacio e Pepe Gratin(128元)を。チューブ状のカラマラータパスタに焦がしバター、挽きたての黒胡椒、たっぷりのペコリーノチーズを絡めてオーブンで焼き上げた一品で、シェアするのにちょうどいい。
デザートの中で一番おすすめなのは、小麦粉不使用のチョコレートケーキ(68元)。見た目は地味だが、口に運ぶと濃厚でしっかりとした味わい、そこに甘めの味噌バタークリームが加わり、黒ごまとショウガのみじん切りをトッピング。カリッとした食感と香ばしさがあり、デザートメニューの中でも際立つ一品だ。ほかにはベトナムコーヒー風ティラミス仕立ての tres leches(58元、ホワイトチョコレートガナッシュ添え)と、パッションフルーツのカラメルプリン(58元、マリネしたイチゴとマカダミアナッツクランブル添え)がある。
ドリンクメニューの中心はマティーニで、5種類あり78元から。定番の Dirty Martini から、柑橘ジャムの香りが漂う Breakfast Martini まで揃う。シグネチャーカクテルは98元、定番カクテルは78元から、シグネチャーワインはグラス68元、ボトルは378元から――価格設定は控えめだ。VICE Shanghai は話題性に頼る必要がない店だ。料理そのものが雄弁に語ってくれるからこそ、腰を落ち着けてしっかり食事をするのも、カウンターで一杯やりながら牛肉麺をすするのも、どちらも十分に応えてくれる。